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11|| 生協病院高校生職場体験

2010.7.28(水) 【高知医療生協】


高知生協病院では春と夏に高校生の職場体験を行っています。午後130分ごろにお伺いしたところ、医師体験コースの高校生が医師との懇談の最中でした(午前中は、DVDなどで医療生協の活動を紹介していたそうです)。テレビやドラマで見る医者の姿にあこがれてきた高校生にとって、現役医師の口から現実の医療現場の話を聞くことは貴重な体験だったようです。高校生からは「収入はいくらぐらい?」とストレートな質問もでて、医師が「本当に答えていいんですか」と人事スタッフに確認するという一幕も。(正直に手取り額を答えていました。)

▲   医師との懇談中
▲ 医師との懇談中

 懇談のあと、生協病院事務次長の山本さんが高校生たちに「生活困難者の気持ちをくみ取れる、痛みのわかる医療従事者になってほしい。医学部に合格したらぜひ往診の体験をしに生協病院に来てください。ある大学1年生が一人暮らしの高齢者の往診を体験した時の感想で『家に入ったら畳が腐っていた。こんなのは初めて見た』と書いていた。こういうくらしをしている人もいることを知らずに医療に携わるのではなく、往診についていって地域の患者さんの様子も見てほしい」と話していました。

▲  シーツ交換体験
▲ シーツ交換体験
▲  足浴体験
▲ 足浴体験
▲  スタッフ手作りののれん
▲ スタッフ手作りののれん

   続いて院内設備の見学に向かう医師コースのグループと別れて、私は看護コースに同行。県立高校普通科3年生の女の子4人のチーム。待ち時間は女の子らしくおしゃべりの花もさいていますが、患者さんに対してきちんと自分から挨拶ができています(さすが高校3年生!)。最初はシーツの交換の体験。寝たままの患者さんのベッドのシーツを交換するときは、患者さんの顔から離れたところでシーツを扱う、患者さんのものを動かしたら元の位置にもどすなどの気遣いを看護師さんから学んでいました。

 

次は足浴。車イスの患者さんに対して、最初、ぎこちなく中腰で洗っていた高校生たちに、看護師さんが「患者さんの顔が見える位置で洗ってあげて」とアドバイス。少し離れて見守っていたスタッフの方に「職場体験の受け入れは大変じゃありませんか?」と尋ねると「いえ、ぜんぜん。患者さんも孫の世代の若い方たちが来てくれるとうれしいようです。」と答えてくれました。高校生たちも少し慣れてきたのか、患者さんとの会話で笑い声も聞こえるようになってきました。

「足を洗う」というようなケアのほかに、ナースコールを頻繁にする患者さんの手を握ってあげる、さすってあげるということをすると落ち着いてくる場合もあるそうです。看護師さんは「心が不安定になった患者さんを薬で眠らせる、というようにはしたくない。空いた時間にさすりにいってあげるなどもしている」と話していました。

 足浴のときに私の目に入ったのは刺繍やアップリケで「せいきょう おんせん」と書かれたかわいらしいのれん。これはスタッフの手作りだそうです。「フィッシュ活動(注)で、みんなで一緒に部屋を飾りつけたりしています。遊んでいるように見えますが、スタッフ間の気持ちをリラックスさせ、笑顔で患者さんに向き合えるように、そしてスタッフの間の和を作るため。ナースステーションには誕生日を迎えるスタッフの写真を貼ったりもしていますよ。」と話してくださいました。


  高校生たちだけになったとき、「ここの体験はどうだった?」と質問してみました。即座に返ってきた答えは「高校1年・2年のとき他の病院も職場体験したけどここが一番雰囲気がいい、アットホームな感じ」「勤めるならここがいい」「ナースって、もっと上下関係があると思っていたけど、みんな仲よさそう。一緒にお昼ご飯を食べているときのかんじで思った。」高校生の目も侮れません。

 最後にこの日の職場体験(医師・看護師・療法士)に参加した全高校生が集合して一言感想を言いました。「介護の道をめざしています。介護というと理学療法士だと思っていましたが、いろんな分野があることを体験で知りました。作業療法士を目指そうかと思う」「笑顔が大切だと思った」「憧れだけではだめだなあと感じた」「意外と体力がいりそう」など様々な感想が出ました。「看護師というと患者さんの手当てや医師のサポートをするものと思っていたが、大切なことは心のケアをすることだとここの職場体験で知った」との発言には病院のスタッフの方も感激。

体験の締めくくりとして人事課の片山さんから、高校生たちに対して、「高度医療を支えるエキスパートなナースも必要ですが、社会の中で光の当たらない人に光を当てる医療を支える医療従事者が大切です。進学して、『そういうところで働く医療者になるんだ』と思えたら生協病院に来てほしいと思います。」と話していました。医療生協の理念を支えるための人材育成は、高校生の職場体験受け入れからすでに始まっていることを感じました。

(S)

(注)フィッシュ活動(フィッシュ理論)についてインターネットで調べてみました。

フィッシュ哲学」とは、もともとは、さびれた米国シアトル市内の「パイク・プレイス魚市場」が、現在全米でも有数の活き活きとした生鮮市場に再生された経験を聞き取ったビジネスコンサルタントが生みの親といわれ、マクドナルドをはじめ4千を超す職場の活性化に取り入れられているといわれています。日本では2001年ころから紹介され、慈恵医科大学病院の取組みなどがあります。

(以上、日本生協連医療部会のホームページから引用)

 

 いろいろな表現がありますが、一例として

「遊び心を忘れない」

「客を楽しませる」

「客に注意を向ける」

「つらい時も楽しく取り組めるよう自分の態度を選ぶ」

原文は、

Play

Make Their Day

Be There

Choose Your Attitude