13|| 患者さんの憩いの場

単協業務で四万十市内に用事ができたので、空き時間に高知医療生協の四万十診療所をおうかがいしました。こちらで、ボランティアによるコーヒーサービスを行っていると聞いていたからです。診療所に着いたのが１１時４０分。でも、それらしき気配はありません。事務の方に教えていただいて行ってみると２人の女性が後片付け済ませたところで、お客様の席はすでに空っぽ。コーヒーサービスは１１時半までなんだそうです、大失敗！でも、県生協連の者だと名乗るとエプロンに「小野」と書いている女性が「まあ座りなさいや」と快く招き入れてくれました。

コーヒーサービスを運営しているボランティアサークルの名前は「こでまり」。「診療所ができてからずっとだから１０年以上になる」そうです。この診療所の準備をする時からこのサービスの構想はあったとのことで、小さな流しも設置されています。サービスは月曜から土曜までの朝９時から１１時半まで（お盆は休み）。登録ボランティアは現在３９人。今年も人数が増えたそうです。ボランティアは診療所の近所の人ばかりではありません。この日のもう一人のボランティアの金平さんは清水から来ているそうですから車で片道３０分以上？「遠い遠いといわれるけど、清水から参加している人が５人ぐらいおるね。私がここに来る日は自分が診察してもらう日。診察受けて薬をもらって、それからボランティアする」とのこと。ちなみに金平さんは私（1962年生まれ）の母と同い年、小野さんは私の父の２歳年上。そのお元気さに脱帽です。金平さんから尊敬をこめて「お母ちゃん」と呼ばれている小野さんは、ボランティアもみんななかよしだから楽しいと笑っていますが、「こでまり」では規約を持ち、総会や研修会（他の介護施設の見学など）も行っているときいて、しっかりした運営がされているなあと感じました。

この日の来店者は２３人。コーヒー代はカンパなのでいくらでもＯＫ。皆さん100円程度を目安にしているようですが、なかには500円玉を入れてくれる人もいるとか。８月５日の日誌を見ると３５人も来ていました。「奥にある丸テーブルで班会を開く班もある。おしっこの検査などをしたあと、『コーヒー持ってきて』って声をかけてくれる」とのこと。振動病の治療を受けている方たちがグループで来たり、他にも常連さんがいるそうです。「コーヒーを飲む人たちは、世間話や自分の病気に関する情報交換もしているし、来れなくなった人のうわさをしたり…。年を取ってきて診療所まで来れなくなった人もだんだんでてくる。その人の様子を知っている人がここで話をしてくれる。それで私たちもその人の様子がわかる。」と金平さん。

お二人のお話を楽しく伺っていると、看護師長の上岡さんが、県連の人がきたとは何事かと心配して顔をだしてくれました。上岡さんには以前に単協業務でご縁があったので、ひとまず安心していただき、医療従事者の側からみたコーヒーサービスについて聞いてみました。上岡さんは、「診療所にとってコーヒーサービスは癒しの場所です。待合にもコーヒーの香りが漂って、待合室の人もおや？という顔をしていますし、待ち時間の間にコーヒーを楽しんでくれる人も。月に１回のお食事会は高齢者中心です。１人暮らしのお年寄りがお食事会に来てくれると、安否がわかりますし、ここで他の人と話をするということもお年寄りにとってはプラス。お食事会のある日には患者さんも多いですね。」若い看護師さんが呼びに来たのであわただしく診療室の方に戻っていく上岡さんを見送りながら、ボランティアのお二人が「ここでは、患者さんをちょっと待たせてもすぐ看護師さんがきて『ごめんね、あと１０分ぐらいやけんね』と声をかけている。他の病院とはちがうよね」と話しているのを聞いて、医療スタッフの行動とボランティアの皆さんの活動には、共通した精神が土台に流れているんだなあと感じました。

お二人とも異口同音に「ここに来るのが楽しみ」とおっしゃいます。そして「昼食会の時が最高」とも。たちまち、お二人の話題はこれからのお食事会の計画に移っていき「昼食に季節の物をいれる楽しみもあるよね。９月は栗ご飯やろうか」「クリスマスはまたするろうか、先生はサンタになってくれるろうか」と話は尽きません。病院はふつう、病気を治しにくるところですが、この診療所は病気じゃなくても来る人がいるところですね。お二人は「ここに来る人は病気を持っているけどそんな風にみえん。コーヒー飲みながらも愚痴はいわんね。みな明るい」とおっしゃいます。次のお食事会は９月第３火曜日だそうです。また来てみたくなりました。

（Ｓ）