会員生協探訪記 23
2011.7.8(金) 【高知大学生協】
大学生への食育メッセージ ~高知大学のミールカードでの取り組み
高知大学生の息子さんを持つ女性が「大学生協から息子の食べたものの明細が来るがやけど、それに手書きのメッセージが毎月書かれちゅうが!すごいでねえ!」と私に話してくれました。大学生協には、事前に購入した「ミールカード」を使って生協食堂メニュー、ベーカリー、ショップで販売しているサンドや弁当(生協自家製商品)を利用できるシステムがあり、約500人が利用しています。希望者には月単位で利用履歴(利用メニュー・栄養価表示)を実家または現住所に送付しており、2010年の4月から、職員さんが手分けしてそれにメッセージを書いているとのこと。朝倉キャンパスに伺ってカフェテリア・ベーリーカフェ担当の和田さんにお話を聞いてきました。
学生さんの利用履歴からはいろいろなことが見えてくるそうです。食べるものが偏っていたり、上限額までうまく使いきれていなかったり・・・。麺類や丼ばかり食べている学生さんには、豊富なメニューの中からいろんなものを食べるようにしてほしいし、朝の利用のない人はきちんと食べているか気がかりで、朝もしっかり食べて欲しい、そんな生協職員の気持ちがメッセージの中で伝えられています。保護者の方から「履歴を受け取るようになって、息子に電話する機会が増えた」との声もあるとか。この日メッセージを書いていたカフェテリアの職員さんは「野菜はたっぷり取ってほしい。繊維の摂取は便秘の解消になるし、代謝の改善にもつながるから。履歴でショップのパンを買っていたら、『サラダカップもあるから一緒に』とか…。あんまり書くと嫌がるかな~、でも、やっぱりね~」と話してくださいました。和田さんによると、職員さんたちは学生の顔を覚えていて、「昨日より少なめやね」とか「しっかりたべなさいよ」などの会話もあるとか。一人暮らしをしている学生さんを、みんなで見守っているみたいで素敵ですね。
このような取り組みの背景には、大学生協としての食育の視点があります。和田さんは「大学は、学問だけでなく社会に出ていくための準備期間。 授業で教えてくれないことを学んでほしい。学生生活を楽しみつつもメリハリのある自己管理ができるように。大学生協は、住宅やパソコン教室など学生生活をいろんな面でサポートしていて、食のサポートはその中の一つですが、食は生活の『幹』になる部分。そこがおろそかにならないように。だから産直米を使うなど、食材にもこだわっていますし、メニューも家庭で出てくるようなご飯を提供したい。食材にこだわると値段が高くなったりもするが、物の価値が分かるようになってほしいし、食事を作ってくれる親御さんの気持ちにも気付いてほしい。」と話してくださいました。
ミールカードには1日当たりの利用額が800円・1000円・1200円のコースがあり、自分の生活パターンに合わせて選べるようになっています。大学生協としては、カード利用に完全に依存するのではなく、食について自立してほしいと考えており、大学の保健管理センターの開催する自炊教室へも協力しているそうです。「将来、大学生協で自炊のサポートをしていきたい。どんなことができるかはわかりませんが、自分で作る習慣をつけて欲しい。『おせっかい』までいくかもしれんけど」と笑う和田さん。「おせっかい」という響き、いいですね。私は「絆」などの言葉より、心にしっくりきます。「協同」って、ささやかな「おせっかい」から始まるんじゃないかな~、なんて思いました。
(S)