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会員生協探訪記 28

2011.10.4(火) 【高知医療生協】


高齢者にやさしい診療所づくり 高知医療生協四万十診療所

四万十市具同にある  高知医療生協 四万十診療所
四万十市具同にある 高知医療生協 四万十診療所

  

2008年、世界保健機関(WHO)は「高齢者にやさしい診療所ツールキット」(注1)を発表しました。日本医療福祉生活協同組合連合会(医療福祉生協連)では、これを翻訳して医療生協の診療所における高齢者ケアの質の向上をすすめており、高知医療生協の四万十診療所でも2009年度から取り組んでいます(注2)。104日に四万十診療所にお邪魔して、氏家事務長にお話を聞かせていただきました。

「高齢者にやさしい診療所」とは「○○を設置する」というような基準ではなく、職員が高齢者の気持ちや体の状態について知識を身につけ、自分たちの施設や接遇にどんな不備があるかを点検しながら課題を見つけて実践していくものです。取り組みを進めていく中で、職員さんの間に「診療所の全員が同じように高齢者にとって良い対応を出来ることが大切」という意識が強くなったそうです。また、今まで自分たちがなにげなくやってきたこと、たとえば患者さんへの声かけを耳元でするとか、下から目線を合わせて話しかける、などが大切なことだということを再認識し、診療所の「強み」を見つけることができたとも。氏家事務長は「待合室で待っている時やドクターの診察を受けている時の接遇も含めて、患者さんが『聞きたいことがあったが言いにくかった』『言い忘れた』ということのないように。そして患者さんに『来てよかった』と思ってもらえる接遇が目標です。」と言います。

接遇の課題発見には組合員さんの意見も活かされています。組合員さんによる診療所点検のチェックリストには、設備のチェックはもちろん、抜き打ちでの接遇チェックや電話対応チェックなどの項目も含まれていて、なかなか厳しいものです。毎月1回開催する利用委員会(組合員の代表と診療所職員の約10人で構成。当初「苦情処理委員会」だったけれど、「診療所を利用してもらうためどうすればいいか」を話しあうということで名前が変わったとのこと)では、班会で出た意見なども話し合われます。

  「患者さんは病院にいるときよりも、班会などでわいわい話しているときのほうが『困ったこと』が話題に出てきます。たとえば『この間は長いこと待たされた』とか。こういう声はありがたいですね。他の病院に行くのではなく苦情を寄せてくれるのは診療所に良くなってほしいという思いがあるからですから。」と話す氏家事務長。施設面でも滑りやすい床などの課題があるとのこと。すぐに改善できないものもありますが、男性用の便器の高さなどの問題は、組合員さんの意見も聞きながら多目的トイレの使い方を広げることでお金をかけずに改善できたそうです。

医療福祉生協連の「高齢者にやさしい診療所ツールキット」と「高齢者にやさしい診療所」導入プログラムに参加している診療所の交流ニュース
医療福祉生協連の「高齢者にやさしい診療所ツールキット」と「高齢者にやさしい診療所」導入プログラムに参加している診療所の交流ニュース

多忙な診療所の業務の中で、職員の皆さんがさらにこのような取り組みを進める原動力はどこにあるのでしょうか。氏家事務長は「ベースにあるのは『1人は万人のために万人は一人のために』という生協の理念です。 生協として患者の立場にたった医療を実践していくことや『患者の権利章典』など、職員教育を積み重ねてきている。主人公は患者さんで、自分たちはそれを援助していく立場。『あなたの主治医はあなたです』ということです。高齢者になっても自分の健康は自分で。認知症などの場合も家族を巻き込んでいくことによってその精神は変わりません。」と話してくださいました。

 氏家事務長に、「目標は?」と伺うと「地域で高齢者が安心して暮らし続けるための診療所づくり」という答えが返ってきました。「『これをやったら出来上がり』というものはないので、課題を探し続けて、それを一つ一つ実践していくしかないんですが…」と笑って話す氏家事務長。地域から必要とされるものであり続けるために、組合員さんが主人公だという視点で、組合員さんと一緒に課題を見つけ、こつこつと実践していくということは、すべての生協に共通して必要なのだということを改めて教えていただきました。ありがとうございました。

(S)

 

 

注1)

世界保健機関(WHO)の「高齢者にやさしい診療所ツールキット」では、高齢者にやさしい診療所」の条件として、①医師、看護師、事務職、介護職などの職員が高齢者ケアについてよくトレーニングを受けており、十分な知識があること、②医療機関の受診に関するシステムが高齢者にとって利用しやすいものであること、③医療機関内の物理的な環境が高齢者にとって利用しやすいよう整備されていること、が挙げられています。(医療福祉生協連HPより)

 

注2)

1(2009年度)はパイロット事業として全国で12診療所(高知医療生協四万十診療所を含む)が「高齢者にやさしい診療所」導入プログラムに取り組みました。これに続いて、第2(2010年度)は全国19の診療所が導入プログラムを進めています。

医療福祉生協連HPより)