ホーム ▶ 会員生協探訪記一覧 ▶ 44 無料低額診療事業3周年

 高知医療生協の潮江診療所では、200910月から無料低額診療事業を行っています。この事業は社会福祉法に基づき、「生計困難者のために無料または低額料金で診療を行う」というもので、高知県内で初めての事業でした。この事業が3周年を迎えたことを機に「ネットワークの力で貧困から『いのち』を救おう」というシンポジウムが、人権啓発センターで開催されました。

 潮江診療所所長の内田医師による基調報告では、無料低額診療の3年間の活動について、年々、事業の利用者が増加していることや、失業をきっかけに生活が困窮し、無保険となって医療にかかれずに重症化していくという連鎖が生まれていることが、報告されました。また、受診のきっかけの多くが個人や団体からの紹介であり、受診後の生活保護や借金の処理、入院などにもさまざまな団体や組織のネットワークの力が発揮されていることも報告されました。

 続いて、5人のパネリスト(高知市福祉事務所、高知県地域生活定着支援センター、高知市民サポーター「はすのは」、高知生協病院ソーシャルワーカー、潮江診療所)により「無料低額診療事業とその周辺課題」についてのパネルディスカッションが行われ、高知県立大学田中きよむ先生がコーディネーターをされました。「低額診療を受けたことで初めて支援組織とつながることができた例もある。生活困窮者を社会から孤立させないための就労機会や居場所づくりも必要」「総合的な相談窓口と、個々の支援を行う機関との連携が重要」「官民に関わらず、事例に基づいて一緒に考えることが有効な支援につながる」「自分たちでは対応できない事例でも、目の前の支援のニーズから逃げず、できるところへ紹介するような命のバトンタッチをうまくできるしくみ、命を守る仕組みを高知方式で」「このシンポジウムに参加している一人一人が、貧困から命を守る社会資源である」など、予定時間を超過する活発な議論がされました。

シンポジウムの閉会にあたって司会の方が、「医療生協がこの事業を続けていけるのは、生活協同組合だから。医療生協の組合員さんが支えてくれているからです」と話されていました。高知医療生協のホームページには、高知医療生協とは「地域の人々が、それぞれの健康・医療とくらしに関わる問題をもちより、組織をつくり、医療機関をもち、運営し、それらを通して、その医療機関に働く役職員・医師をはじめとした医療スタッフとの協同によって、 問題解決のために運動する、生協法にもとづく住民の自主的組織です。」と書かれています。潮江診療所に続いて、高知生協病院でも無料低額診療事業を開始したそうです。医療生協の組合員さんたちの協同の力により、「命を守るネットワーク」の拠点が高知の中にまた一つ、増えました。

S